上がったり下がったりの人生曲線(前編)

今回は企業の障害者雇用の部門で働いておられる女性の方に伺いました。

上がったり下がったりの人生曲線

(自分の人生を人に話したことがあるか聞かれて)
聞かれれば答えるくらいで、あんまりそんないい人生でもないので、あんまり人には話さないです、はい。別に隠してるわけではないんですけど。
18歳までは割といい感じで来たんですけど、高校があんまり馴染めなくて、3年間とりあえず大学行くために行ってたんですけど、大学も実は第一希望には入れなくて…でも行ったところですごくいい友達に巡り会えて。
教員になりたかったんです。
中学2年の時に持ってくださった先生方がすごくよくて。でまぁ私自身のこともすごく評価してくださって、授業もそこそこ楽しくて、ちょうど友達に恵まれていて、学校はすごく楽しかったんで。今度はあっちの立場に立って子どもたちに楽しい思いをしてもらいたいなって思ったのが多分きっかけで。それからずっと中学校公立中学校の教員を目指して教員免許が取れる大学をねらっていました。自分が一番楽しかった頃に戻れるように。ほんとは国語の教員で行きたかったんですけど受験でうまくいかなくて。であんまり好きでも嫌いでもない社会科の先生の方になって一応免許を取ったんですけれど、やはり採用枠が全然なくて。で、弟もいたのでこれ以上両親に経済的負担をかけるのはちょっとしんどいと思ったので方向転換して、民間企業に就職を考えたんです。
教育学部ではないんです、普通の学部で。教育学部にすごい行きたかったんですけど、なにせ数学ができなくて国公立に箸にも棒にもかからなくて。で、そこでまず諦め。で、私大、私立の大学を考えた時にまあ入れるところ、確実に入れる、浪人せずに入れるとこ狙って行きました。まあ挫折といえば挫折なんですけどでも。そこで、すごくいい友達に巡り合って、今でも結構交流が続いているので、すごくありがたいなって思っています
就職活動が結構しんどくて。教育実習と並行しておこなってたんですけど、教育実習もすごい大変で、結局教員になる道にはもう行けないって見切りをつけながらの就職活動だったんで、たぶん相手にもそれが伝わっちゃったと思うんですけども。やっぱりどっかで、あー教員やりたいなー、って言う気持ちが引っかかっていながら、なんとなく全然違う流通業の世界に入りました。入った会社がすごくブラックな会社で、もう本当に朝から夜中までで。ちょっと体壊して今の会社に来たんですけども。
それから、出産して一回上向きになって。
(人生曲線で急激に下向きになる部分を聞かれて)
このドンズバは離婚です。離婚して今シングルマザーなんですけども、まあ、あの離婚したことに関しては後悔してないんですけども。むしろすっきりしたんですけども、やっぱり子どもの立場に立つと、親の勝手で片親になっているので、ま、息子も学校とかで片親なのを感じることがここのところ多くて。息子には申し訳ないなと思いつつ、ま、とりあえず楽しくやっていこうよ、みたいに持っていってるんですけれども、ちょっと限界を感じることがあります。

障がい者雇用の仕事

今は生活を立て直している、みたいな感じです。企業の中で障害者雇用をやっている部署で、事務的な雇用率を出すという仕事をしつつ、知的障害と自閉症と発達障害と記憶障害を持った方と一緒に働いているんです。今の会社に入った時はもう本当に事務ばっかりで、最初は外商の事務に入って、その後すぐに人事部の事務に入って。アルバイトの山の管理ですとか給与計算ですとか、もう本当にそういう事務仕事ばっかりをやっていて。で、 離婚が成立した3ヶ月後に今の部署、障害者雇用の部署にいきなり異動になって。何のノウハウもないまま、障害を持った方が目の前にズラッといる中に入って。まあ試行錯誤の日々を過ごしています。
毎日その方たちと一緒にいます。仕事自体はすごい学びもあっていいんですけども、ま、今、仕事は割と充実してると思うんですけれども、最近しんどくなってきて。たまに、あの、行き詰まると言うか、しんどくなって。
今の部署に来たのは息子が3歳の時です。やっぱりこういう言い方をするのは何なんですけど知的で重い子もいるので、今息子が小学生なんですけども、息子がその子たてをどんどん追い抜いててしまう様を間近で見ていて。で、なんか会社でこの子たちに、みんな25歳前後なんでこの子たちという年代ではないんですけど、どういうことを教えて、どういうことにチャレンジしてもらうか、っていう境目にすごく悩んでいて。障害のせいでできないのならやってもらわない方がいいのか、それとも頑張ればできるようになるのか、彼らと働き始めて7年目に入るんですけど、全然できなかったことができるようになったこともたくさんあるんで、諦めちゃうのもこっちの方だよなぁって思ったりとか。もしかしたら、頑張れって言ってることが彼らにはすごく酷なことなのかもしれないですし、でも、なんか諦めてしまったらそこで可能性がなくなってしまうような、そんなはざまですごく行き詰ってます。目に見えない部分なので。なんかこんなこというのは、すごく上から目線だなーって思いつつ。
企業なんでそこで利益を出さなきゃいけないっていうミッションがあるにしても、間近で彼らの成長を見ていられるっていうのはすごく幸せだと思って。やっぱり試行錯誤、この言い方じゃ伝わらないから、じゃあちょっと言葉を変えようとか。もうそういう毎日なので。今の仕事自体にはすごく充実はしているんですけど。 

息子さんのユメ

その一方で、自分の息子もちょっとグレーゾーンですって診断を受けたことがあって。でも彼は彼できちんと成長していて、自分で考えるようになって、僕は将来こういうのになりたいとか、こういう人になりたいとか言うようになってきているので。でも、親としてどういう風にサポートしたらいいのかなあ、とか。正直、それ絶対無理じゃないとか思うことも、彼は平気で真面目に語るので、くじくのもあれだし。かといって持ち上げても挫折が見えてるのに、どうしたらいいんだろうっていう。
将来僕は学校の先生になりたいと言っていて。私も教員目指していたけど、別路線に変えたっていう経緯があるし、近しい人間が教員をやっていて、それは凄まじい激務なので、果たしてそれをこの子がやるのかなーとか思って、複雑な思いが。でも素敵な職業だと私は思っていて、背中を押したいなという気持ちもあり、大丈夫かなー、折れちゃわないかなー、っていう。そういった心配なんですね。
先生になりたいっていうのは、たぶん今までの担任の先生がすごく好きで。やっぱりそこからの影響が多分あったと思うんですけど。
あと、近しい人が教員なんです。その仕事が大変なのもすごく間近で見てると思うんですけども、それでも何か楽しそうと思えるなにかが彼の中にあると思うんですよね。教壇に立ってるところは見たことがないんですけど、お家に行くとやっぱりいろんな教材とか生徒さんからもらった手紙とかがあって、それを見せてもらったりとかして。僕もこういうのもらえるような先生になりたい、と言ってるんですけど。
私が教員を目指してたけどなれなかったって言ったことも影響あるかも。今の仕事もまあ半ば教員っぽいところもあるので。教育が割とメインなんだよっていう話をしたことがあるので。まだ小さかった時に2回くらい職場にも連れて来たりして、うちのメンバーに会わせたりとかもしたので、なんとなくイメージが彼の中にはあると思うんですけども。それでもやりたいって、小学校1年生から今もブレずに言い続けてる。
なんか良い方向に行ってくれればいいんですけども。まあ私みたいに、先生になれないってなった時に、ちゃんと方向転換できるように視野を広げてあげたいんですよね。  

息子さんが今欲しいのは任天堂スイッチとお父さん

お父さん欲しいって、すごい今言われていて。こればっかりはどうにもなんないんで。ニンテンドースイッチとお父さんが欲しいって言われていて。スイッチはお金で買えるけどお父さんは買えないっていう話をしたんですけど、本人はそれも分かっていて。それでも、どうしたらお父さんが来てくれるのかなっていう話を、未だに、小学生にもなってまだするんで。やっぱり寂しいんだろうなーって思って。
離婚したのは、えーと3歳ちょい。記憶がなくなってきている頃なので、旧姓と言うか彼の生まれた土地と苗字とか忘れていって、何だったっけ、って言ってあっけらかんとしてるんですけども。やっぱり、お父さんとまた暮らしたいなっていうんですけども、それは私的にも無理なんで。
あんまり詳しくは話してないんですけど、離婚の理由とかは。もう少し大きくなってから話そうかなと思ってるんですけども、当時の記憶があんまりないんですよ。なんかこう、離婚を決めて、ほぼ一方的に私が決めて家出ちゃったので、そっからの手続きがすごい大変で、今の仕事も続けてたんで、休みも全部潰して役所に行って。子どものそういう改姓の手続き、苗字の変更とか銀行に行ったりとか、とにかく目まぐるしくて。で、子どもも保育園に入れなくて両親に来てもらって、っていうのが半年ぐらい続いて。気持ちはすっきりしたんですけど、やらなきゃいけないことがたくさんありすぎて、あんまり記憶がなくて。今はだいぶ落ち着いてるんですけども
割り切れてきたんですかね。もうしょうがないや、みたいな。あと一緒に働いてるメンバーも自分の息子も成長してきて会話が成り立つようになってきて、向こうの考えていることもちゃんと言葉で伝えてくれることが増えてきたので、そこはすごく対等に、一緒に考えていける部分が増えてきて。今までは、なんでだろう、ってこっちがこう、悟ってあげないとわからないってとこがすごく多かったんですけども、それがだんだん減ってきて、そこは楽になってきたのかなあって、まあ逆に思春期とかって分からなくなることも多いんですけど。なんか対等になってきたのかなあ、っていうのが、すごく楽になり頼もしくもあり。
なんかちょっと変わってますけど。学校とかでも平気で一人でポツンといられる子なので。でもまぁ一応学校行って今普通に帰ってきてお友達もいないわけではないみたいなんで、今のところ今すぐどうっていう問題があるわけでもない。

後編へ続く

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