夢育ての理念
人はみな自分の思いを持っています。うれしかったこと、うまくやれたこと、なりたいもの、心が動いたこと、これらは全部、夢の種です。
夢の種は、人間関係の中で育ちます。障害があったり、社会的に分離されていたり、周囲が過保護になると、人間関係が限定されがちです。そのため、夢の種があっても、育たない人がとても多くいます。
信頼できる大人が、1人1人の思いにじっくりと耳を傾けることが最初に一歩になります。語りの中から、思い=夢の種が芽を吹いてきます。そして大人たちが共感を深めたり、一緒に体験したりすると、夢の芽は元気に育っていきます。
そして、自らの夢や希望に向けて、自らの資質の向上に努力したり、周囲の協力を取り付けたりすることは、本人にとって、楽しい人生の軌跡そのものになります。
このようにして育てた夢と夢への道筋は、その人の生き方の軸になると考えています。そして誰かの夢は、別の誰かの夢へとつながります。
私たちは、夢育て活動を通して、だれもが夢を育み、目指すことができる「夢を育てる社会」を創っていきたいと考えています。そして一人一人の胸に生まれた夢は、その人を育てていきます。そうして夢のある大人として、自らも努力し、周囲の協力を取り付けていくことができるようになれば、その人はきっと社会を照らす光になってくれるものと思います。
私たちのこの考え方を、図で示すと以下のようになります。障害をリハビリして社会に合わせる従来型の福祉・教育も大切ですし、社会の側の環境整備も大切です。しかし、当事者の思い、図の右下の部分が育っていないと、豊かで主体的な人生は始まらないと考えています。
また、夢や希望が生まれても、知的発達障がいのある人は、夢に向かってどう進んで行けば分からないという問題があります。こうした人たちも、大人の助け(媒介者)を得ることで、自らの夢や希望に向かって、認知的に成長することができます。
人は、数多くのステップを経て、認知的に一つ一つ成長していくものです(認知構造変容)。私たち自身、そのようなステップを経て成長してきたのです。しかし、大人になってしまうと、どこでどう認知的段階を乗り越えてきたのか、すっかり忘れてしまっているのです。だから、私たちは知的発達障害のある人を上手く成長に導けないのです。
私たちは、知的発達障がいのある人の認知的成長を促すために、対象者がどこで躓いていて(認知機能)、どんなステップで“わかる”こと(認知構造変容)ができるのか、どんな活動や教材が適しているのか(認知地図)、そして良き媒介者とはどんなことに気をつける必要があるのか(媒介学習体験の基準)について、学び、日々、実践しています。
また、畑作業は、具体性が高く(抽象性が低く)、単純な作業から複雑な作業まで幅広い様々な作業を含んでいます。全国の農福連携の現場には、知的発達障がいのある人が驚くほど成長したという事例が沢山あります。
そこで、私たちは、東京世田谷桜丘の丘の上にインクルーシブな夢育て農園を開園しました。
豊かな人間関係を育む場として、月1回、どなたでも参加できるオープンデイや、畑でとれたもので芋煮会や藍染めの会などを開いています。
また、知的発達障がいなど生きずらさのある人を対象に、認知発達プログラムと農作業を組み合わせた塾を開講し、質の高い「農福x教育」を展開しています。
既に受講生が認知的に発達していることを定量的に計測することができています。(2023年高障機構職業リハビリテーション研究実践発表会論文参照)
皆さん、どうかあきらめないでください。
私たちは今後も、農作業や認知発達プログラムを通じた認知発達促進法を進化させるオープン・イノベーションを継続していきます。
また地域のエコ循環とともに、土や植物と触れ、豊かな人間関係を育むインクルーシブなコミュニティを発展させていきます。
さらに、Workshop等を通じてノウハウを広く公開し、家庭、学校、福祉や雇用の場に、知的発達障がいのある人の成長の場を広げて行きたいと考えています。
そして将来、認知発達一般を担うセンターのような組織に移行し、社会が夢を育て、夢が人を育て、人が社会を照らす循環作りに貢献して参りたいと考えています。
皆様が、この活動に参加して下さったり、応援して下さることを、心待ちに致しております。
株式会社夢育て
代表取締役 前川哲弥